50代うすぼんやり生きています

50代のあれやこれや、管理人「凡子」が関わってきた今昔を綴っていきます

賃借人が引っ越した部屋を家主が鍵をかけないでおくなんて現実にあるの?

唐突ですが、ドラマなんかで、彼が引っ越したことを彼のマンションを訪れて彼女が初めて知るみたいなシーンがあります。

恋人同士がかつて楽しい時間を過ごしたマンションの一室。けれど彼は海外に留学するとか、別の女のところに転がり込むとか、何らかの事情があって、彼女に引っ越すことを告げずに去り、彼女は彼のその部屋を訪れて、彼がもういないことを知る。
家具も取り払われ、何もない部屋に夕日の光だけが差し込んで。走馬灯のように彼との思い出が蘇り、彼女は思わず泣きじゃくる…そんな切ないシーンです。

常々、こういうシーンを見るたび、「これホントかよ」と思っていました。

賃借人が引っ越した部屋を家主が鍵をかけないでおくなんて現実にあるの?

 賃借人が引っ越した部屋を家主が鍵をかけないでおくなんて現実にあるのか、そんな疑問に答えちゃいます。

あっ、気にしたことない?まあ、そう言わずちょっと聞いてくださいな。

そういうシーンのお約束として、彼の部屋の前まで行ったものの鍵がかかっている。彼は留守なだけかもしれないけど、もしかしたら引っ越したのかもしれない…とはならないんですね。鍵閉まってるだけなら、引っ越したかどうか曖昧で、ドラマ上、盛り上がらない。
賢明な脚本家の方は、ガランとした部屋に一人佇む彼女の寂しさ、流す涙を描くことで、ガツンと彼の喪失を演出します。

でもさ、セキュリティ上、大家か管理会社かわかんないけど、そのまま鍵もかけないでおくなんてことがあるんでしょうか。
だれか不審者が入り込んで居座ったり、部屋の壁に落書きとか、ブレーカーのスイッチを勝手に入れて盗電とか、トイレ壊して器物損壊とか、困るんじゃないかと常々思うわけですよ。誰が管理責任取るの?

だからアレはドラマ上の演出で現実にはない話だよねと、長らく思ってきたわけです。

ところが、自分が不動産会社で勤めるようになると、あながちない話ではないことがわかります。

そう、あるんです!

不動産屋は物件を見て借りてもらってなんぼの世界です。
うちの会社で所有しているアパートやマンション物件の話を言えば、比較的新しい建物ならキーボックスとか鍵番人と呼ばれる、中に鍵が入る箱状のものをドアの辺りにつけてます。暗証番号が設定できるので、仲介の不動産会社が中を見たいと言われたときも、いちいち鍵を渡しに行ったり取りにきて貰わなくていいようになってます。電話で暗証番号をお知らせすればいいわけですから。

こんな風にキーボックスをつけてますが、全ての物件じゃないです。

どういう物件に付けてないかというと、築40年とかの古いビル。軽量鉄骨なので、アパートじゃなくて括りはマンションです。
さすがに路面に面した1階は鍵かけますが、2階以上はキーボックスつけるほど手もかけられず、不動産会社から問い合わせがあれば勝手に見てください状態です。直接のお客様からお問い合わせがあればご案内はしますが。

で、誰かが入り込んで何か問題があるかというと、まずない。少なくとも私が入社してここ数年は一軒もないです。
凡子の済んでいるところが地方ということもありますが。

それがラッキーな確率かはわかりませんが、だから「賃借人が引っ越した部屋を家主が鍵をかけないでおくなんて現実にあるの?」と聞かれれば、結論は、
「あんまりないけど皆無でもない」という答えになります。「但し、鍵をかけないのはオシャンティじゃないボロいマンション」です。
少なくとも凡子の知る限りでは。

でもドラマでは多分、ボロさは厳禁。
キッチンがサビだらけとか、壁や床が傷だらけとか、床が腐って沈んでいたり、カマドウマが玄関先でピョンピョン跳ねたり、ゴキブリが「こんにちは」は多分NG。

彼女の悲しみより、ゴキブリやカマドウマの動向の方が気になってしまえばドラマに集中できません。下手したら『ゴキブリ駆除物語-カマドウマは病原菌とか持っていないので駆除はやめて畏怖するだけにしてくださいね』になって話が変わっちゃうので、やっぱりある程度オシャンティにしちゃうのは、仕方のないことなのでしょう。

皆様の「賃借人が引っ越した部屋を家主が鍵をかけないでおくなんて現実にあるの?」という積年のご質問の答えになっておりましたかしら。
いやそもそもそんな疑問持っちゃいない、カマドウマは田舎にしかいないだろって、それは大変失礼いたしました。