「ワンレン・ボディコン・舘ひろしぃ」あの懐かしいバブル期を平野ノラが伝えてくれるけど…
6、7年程前の事です。
ある会社に、就職の為の面接を受けに行ったことがありました。
凡子が40代の前半の頃、面接をしてくれた社長さんは凡子より、8歳くらい若い方だったと思います。
多分話題がなかったんだろうと思います。
履歴書の出身大学の話になり、「女性の方で当時大学に行くのは珍しいことだったんじゃないですか?」と社長さんが訊ねてきました。
大学は褒められるような立派なところじゃないし、他に褒めるとこがないから、ちょっとよいしょの意味もあってそう言ったんだと思うけど、一瞬返答に詰まります。
う~ん、この人は私のことを明治か大正生まれの人間と勘違いしてるんじゃなかろうか。
「お父様、凡子はどうしても学問がしたいのです。学問で身を立てたいのです」
「身の程をわきまえろ。女に学問なぞ必要ない。家のことだけしていればいいのだ」
「お父様のわからずや!! これからの時代、女にだって学問は必要です!!」
一瞬そんな妄想が駆け巡るが、もちろんそんな事実はありません。
学問なんてしたいと思ったこともなく、当時風に言えばモラトリアムというやつで社会に出るのを遅らせただけ。
「社長、8年くらいしか年が違わなければ、大学進学率事情もそんなに違わないでしょ。あの80年代後半のイケイケのバブル期を生きてきたのよ」なんて、面接時は
傲慢に思ったものでしたが、今思うと果たしてそれは本当だったろうか。
平野ノラが「ワンレン・ボディコン・舘ひろしぃ」と、あのバブリーな時代を今に伝えてくれていて、お~懐かしい、その時代が凡子の青春時代だったなぁ、しみじみ…なんて思い返してみるんだけど、どうもね、今一つ実感ってない。
当時は空前の女子大生ブームだったが、その恩恵に預かっていただろうか。
ミツグくんだのメッシー、アッシーなんていうのが流行っていた気もするけど、そんなものが凡子に存在していただろうか。
ジュリアナ東京のお立ち台で、センスを振って踊り狂って、なんて絶対ない。合コンに行っても会費はしっかり取られていたし、タクシー代をもらったこともない。
「しもしも~」なんて、巨大な携帯電話を肩からさげてもいなかったし、肩パッドがバリバリ入った格好は辛うじてしてて肩が圧迫されて、20代前半ですっごく肩こりだったけど、そんだけ。
地味に学生時代を過ごした凡子には、バブルは雑誌やテレビを通して知るもので、リアルに体感なんかしちゃいなかった。
平野ノラ同程度、いやそれ以下にしかバブルを知らないこの事実…。
うすぼんやりしているうちに、青春時代は過ぎ去りぬ。
「あの頃、イケイケで楽しかったよね」
そんな風にバブルを語りたい。くうぅ~~!!
日常的な記憶は、後に与えた情報により極めて改ざんしやすいものであるという。
鮮明な記憶であってもそれが真実とは限らない。記憶は嘘をつく。記憶は捏造される。
多分ね、凡子はバブル期は過ごしちゃいない。そんな記憶は、改ざんされたもの。多分、違う時代を生きてたね。実感が薄いのは、そのせい。
地味で冴えない為にバブルの恩恵に預かれなかったなんて、まさかまさか。そんな事実はないからと、固く自分に言い聞かせる今日この頃の凡子でした。