50代うすぼんやり生きています

50代のあれやこれや、管理人「凡子」が関わってきた今昔を綴っていきます

キレイな事務員さんが仕事中、競馬中継を見ていた衝撃

今の会社に入社して何日も経っていない頃のお話です。
キレイでいかにも上品そうな事務員さんが、ネットで競馬中継を見ながら「行けー!!」と拳を上げていた。
その衝撃ったら半端じゃない。

これがこそこそやっていたなら、こちらも見ないふりができます。しかし隠すどころか、事務員さんの声は結構でかい。

人数の少ない会社です。社長室があるわけでも仕切りがあるわけでもなく、シンと静まり返っただだっ広いフロアに社員は数人。

反響する「行け、行け、行けーー!!」の声。

なんて大胆な…。凡子、とんでもない会社に入社したんじゃないだろうか。
うわ、これ絶対社長に聞こえてるよ。ヤバい、ヤバすぎる!!
怒号が飛ぶよ。

キレイな事務員さんが仕事中、競馬中継を見ていた衝撃

 社長の叱責が飛ぶのを予想して身構えるが、意に反して何も起こらない。

もしかして、社長も競馬がお好きで、話を合わせるためにやってる?
そんな風に考えて、恐る恐るパソコンの陰から、社長の様子を窺い見ても、特に反応はなし。

えっ、社長はスルー? 競馬好きなんじゃないの??
じゃこの事務員さんは、自分を抑えきれないほどの、競馬好き!? 生粋のギャンブラー??

人はあり得ないものに遭遇したとき、言い知れぬ恐怖に襲われる。

とりあえず仕事に集中。でもまだ入ったばかりで、やることは大してない。集中を要するようなことは全然ない。
それでも一心不乱に自分のパソコンのモニターを食い入るように見て、事務員さんの声を頭から締め出します。

「おしゃー、やった!!」
事務員さんの歓喜の声が聞こえるけど、きっとこれは幻聴。

あんなキレイで上品そうな事務員さんが、仕事中に競馬中継に熱中するなんてありえない。幻聴よ、何も聞こるはずないわ。凡子、初めての職場で緊張して幻聴が聞こえているだけなのよ。

「おー、一馬身差。結構差がついたね」

やっぱ、聞こえるじゃん!

ここで不審や非難がましい雰囲気を醸しちゃダメ。そんなことになったら、とんでもないことが起きるわ。

「何よ、私のやることに文句あるってーの!?」なんて、言いがかりをつけられるかも。そうキレイなバラには棘があるっていうじゃない?

穏便に、穏便に。何事もなかったかのように、振る舞うの、凡子!!平常心よ!!

そのとき、別の考えが頭をもたげます。

でも、もし、もしもよ、ここの社長は、仏のような慈悲深い方で、社員が何をしようと全く一切怒らない人、そんなことがあるんじゃない? その証拠に事務員さんの声は絶対社長に聞こえているはずなのに、何も言われていない。

この会社は、社員が自由に生きることを許された、何をしても叱られない、失われた楽園「Lost paradise」なんじゃない? もしかして、凡子、そんな会社に招き入れられた?

えー、まさか。凡子、そんなに何かいいことしたっけ!?

したのよ、した、どっかできっとしてた!! だからこの会社に採用されたのよ。全ては神の采配。
神様、ありがとう。凡子は、今日から、この会社でパラダイスを満喫します。

ぱあぁぁぁぁ………!!
その瞬間、凡子の視界は明るくクリアに、大きく広がったのであった。

 

えーー、視界が大きく広がったように感じた凡子でしたが、後日真相が明らかになります。

うちの会社、通常の業務の傍ら、競走馬も管理しておりました。
事務員さんが一生懸命応援していたのは、何のことはないうちの馬。持ち馬が賞金取れるよう応援していただけでした。

事務員さんは、仕事中も競馬中継が欠かせない生粋のギャンブラーではなくて、きっちりしっかりご自分の仕事をしていただけでしたわ。

ですよねーーー!!