50代うすぼんやり生きています

50代のあれやこれや、管理人「凡子」が関わってきた今昔を綴っていきます

人間の尊厳を傷つける奴に出会ったらマッハで逃げろ『ガール・オン・ザ・トレイン』

アマゾンプライムビデオで『ガール・オン・ザ・トレイン』を観ました。

かなり考えさせられたので、ちょこっと、感想を書いてみます。

以下、ざっくりしたあらすじ。多少ネタバレあるので、予備知識を入れたくない方はスルー下さいませ。

主人公のレイチェルは、アル中で失業中。
失業中だから本当だったら乗る必要のない通勤電車に毎日乗って、飲んだくれながら、列車の窓から家々を眺めるのが日課。レイチェルが気になる家は、2軒あって、1軒目には、メガンという女性が住んでいます。
ダンナとバルコニーで仲睦まじげにいちゃつくメガンは、レイチェルの理想。
メガンに、かつての幸せだった自分を重ねて、二人の姿をスケッチに描いたりして妄想することで、自分のみじめさや不幸を慰めています。

人間の尊厳を傷つける奴に出会ったらマッハで逃げろ『ガール・オン・ザ・トレイン』

2軒目は、レイチェルが離婚前に、夫のトムと暮していた家。今では、元夫のトム、新しい妻のアナ、二人の間に生まれた赤ん坊が暮らしています。

レイチェル、メガン、アナ、それぞれに闇を抱えた三人の女性を軸に物語は進行していきます。

レイチェルは、不倫の末にトムを奪ったアナを憎んでいて、かつての自分の家に忍び込んで赤ん坊を連れ去ろうとしたり、トムに電話をかけまくったり、はたまたアナに電話で暴言を吐くなど、尋常な精神状態ではない様がこれでもかと描かれます。

列車の中でもアルコールが手放せず、水筒にお酒を入れ替えてちゅうちゅう吸っている姿は、痛い女の典型。あまりに荒んでいるので、感情移入しにくい~。

いつものように、列車の窓からメガンの家を見つめるレイチェルは、衝撃的な光景を目にします。それは、理想の女だとあがめていたメガンが、バルコニーで、夫ではない男性と抱き合う姿。
理想が汚されたようで激しい怒りを覚えたレイチェルは、酔った勢いで、メガンに物申すべく、メガンの家へと向います。
途中、トンネルの前でメガンを見つけたレイチェルは、「あばずれ!」とメガンを罵倒。

しかし記憶はそこで途切れ、翌朝、自宅で目を覚ましたレイチェルの後頭部には、べったりと血がついています。シャツも血だらけ。泥酔していたレイチェルには、昨夜の記憶がありません。

その後レイチェルは、メガンの失踪をニュースで知り、否が応でも事件に巻き込まれていくのでした。

観終わって思うことは、「あ~、人が尊厳を奪われた物語だなぁ」ということ。サスペンスですが、犯人はわりに予想がつきやすいので、注目したいのは、全編に流れるレイチェルの不安。

レイチェルは メガンが失踪した謎を解こうとしますが、たえず自分がメガン失踪に関わっているんじゃないかという恐怖を拭い去ることができません。
アル中と鬱屈した怒りがあいまって、記憶の欠落や混濁にたえず悩まされます。

フラッシュバックするメガンを襲う自分の姿。それが想像にすぎないのか、本当の記憶なのか、その判断がつきません。時間軸がバラバラに展開される映画的手法もあって、見てるこっちまで、酔っぱらったようで何がなんだかわからなくなります。

尊厳を奪われ、ずたずたの精神状態に追い込まれたとき、自分の行動に確信が持てず、自分を信じることができなくなる、これは、恐怖です。

世の中には、人の尊厳を傷つけ、相手のエネルギーを奪うことでしか、自分の優位性を保てない人間が少なからず存在します。

夫婦間だけじゃなく、上司と部下、親と子、友人関係など、いろんなところで愛情に見せかけた搾取が行われています。ときには、愛情に見せかける体裁さえ取り繕わずに、ときには奪う側もそれが愛情だと信じて。

そういうエナジーバンパイア、エネルギーを奪いし者に魅入れた人間は、二重の意味で不幸と言えます。

虐げられることの不幸と、自分は貶められるだけの価値しかないと思わされることの不幸。

搾取のやり方は、人により様々で、かつ巧妙だったりします。

そういう人間に会ったら飛んで逃げろっっっ~と思ったりするのですが、一人では生きられないと洗脳されていると、搾取されていることにすら気づくことができません。逃げるなんてなおのこと。

この映画の肝は、レイチェルがどうにか洗脳を解いて、ずたずたになった自己信頼を辛くも再構築していくところと言えるでしょ う。痛ましい犠牲と引き替えに。
そしてそれは、運命の歯車がちょっとずれていれば、容易に入れ替わったかもしれない、自分だったかもしれない危うさを秘めていて。友情などという甘っちょろい言葉で括れない、運命の輪に絡め取られた三人の女の関係性は、見ごたえがありました。

オープニングとラストで、レイチェルに対する印象が見事に変わりましたね~~~!!

で、主演のレイチェル、どっかで見た女優さんだなぁと思ったら、『プラダを着た悪魔』のもう1人のアシスタント役、エミリー・ブラントでした。

プラダを着た悪魔』では意地悪なんだけどどこか憎めないコミカルでチャーミングな演技が印象的でしたが、『ガール・オン・ザ・トレイン』ではアルコールをすするように飲む真逆な役どころ、振り幅すごいなと思いました。

教訓。人間の尊厳を容赦なく傷つけてくる奴に出会ったら、洗脳される前にマッハで逃げましょう~~~!!

 

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